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ラディッキオの概念を変えるタルディーヴォの真価 中田シェフ×BRAVURA

  イタリア野菜の一種であるラディッキオ・ロッソ。チコリの一種が15世紀にヴェネト州に伝わって品種改良され、「根」を意味する単語「ラディーチ」を語源としてラディッキオと命名されました。一言にラディッキオ・ロッソと言ってもおおまかに以下の種類があり全てヴェネト州内の都市の名前が付いています。

○ラディッキオ・ロッソ・ディ・キオッジャ(球体状で市場に流通しているのはほとんどがこのタイプ)
○ラディッキオ・ロッソ・ディ・ヴェローナ(ずんぐり形)
○ラディッキオ・ロッソ・ディ・トレヴィーゾ・プレコーチェ(早生タイプ)
○ラディッキオ・ロッソ・ディ・トレヴィーゾ・タルディーヴォ(晩生タイプ)
○ラディッキオ・ヴァリエガート・ディ・カステルフランコ(変形タイプ)

  上記5種類の中でもズバ抜けた手間暇が掛かっていて価格も最高級なのがラディッキオ・ロッソ・ディ・トレヴィーゾ・タルディーヴォ。タルディーヴォもプレコーチェもどちらもトレヴィーゾ周辺で栽培される同一品種なのですがタルディーヴォは株ごと引っこ抜いて一定温度に保った水槽に浸して数週間の水耕栽培を行い、枯れてきた外葉を手作業で取り除いて新たに成長してきた芯の部分だけを食用に用いるという贅沢品なのです。ヨーロッパの中で最も自国の商品の品質保証に熱心であるイタリアではラディッキオ・ロッソもI.G.P(インディカツィオーネ・ジェオグラフィカ・プロテッタの略で保護地理表示と訳される)認定がなされていて、日本で栽培方法を真似て栽培してもラディッキオ・ロッソ・ディ・トレヴィーゾ・タルディーヴォと名乗ることはできません。そもそもそんな手間の掛かることを日本でやっているところあるのか?と思って調べてみたら山形県河北町にある「かほくイタリア野菜研究会」で栽培に取り組んでいるそうです!

  そんなラディッキオ・ロッソ・ディ・トレヴィーゾ・タルディーヴォ(以下「タルディーヴォ」と略します)を特別ルートで取り寄せている料理人がいます。そして10数年前にトレヴィーゾでタルディーヴォを食べて魅了されたサーヴィスマンがいます。この二人がお店の垣根を越え、神戸と大阪という距離を越えてタルディーヴォを主役にしたイベントをコラボすることになったのです。
  その料理人とは六甲道にある「ABBRACCIO&BACIO(アッブラッチォ・エ・バッチォ)」の中田オーナーシェフ。そしてサーヴィスマンとは「LA VINERIA BRAVURA(ラ・ヴィネリア・ブラヴーラ)」のタク店長。先月に中田シェフからBRAVURAでのコラボイベントの話が進んでいることを聞いていましたがまさかラディッキオ・ロッソを主役にすることは予想だにできませんでした。
  BRAVURAが外部からのゲストシェフとコラボするイベントと言うと毎月開催の「チルコロ」がありますが今回はチルコロとしての開催ではありません。チルコロは毎回定額の会費なので料理もワインも会費の範囲内でのベストを尽くすことになり、それはそれで楽しいのですがせっかくのゲストシェフにもっと存分に腕を振るってほしいという不満はあります。今回は中田シェフの技術と知識とを駆使して最高級のタルディーヴォを楽しみ尽くすための会なので会費もBRAVURA史上最高価格となりました(それでも昨今の高騰し続けるワイン会の会費と比較して良心的だと言えます)。

  10月の会と同じく中田シェフの盟友の門戸厄神「Aranjuez(アランフェス)」山崎オーナーシェフがヘルプに加わって次々に絶品料理がサーヴされていきます。

<コース料理>
1.テッリーナ・ディ・“ブーダン・ノワール”に紅玉リンゴのアル・フォルノとヴィンコット添え
2.タルディーヴォのインサラータ リコッタ・サラータとキァンティ・ヴィネガー
 +タルディーヴォを練り込んだ自家培養ブドウ酵母のパーネ
3.タルディーヴォのリゾットにパルミジャーノ・レッジャーノ添え
4.タルディーヴォのヴェネト風フリットにボッタルガ添え
5.タルディーヴォのグリーリアとトスカーナ産チンタ・セネーゼ豚骨付きロース肉
6.ミッレ・フォーリア

  合わせるワインもmicoソムリエール&タク店長&中田シェフ&山崎シェフの4人で料理とのアッビナメントを考え抜いて選び抜いた6種類。

<ワインリスト>
1.コル・サリス「バルバメト・ミレジマート2010マグナム」
2.エミリオ・ブルフォン「シャリン2014」
3.トブラール「コッリ・オリエンターリ・デル・フリウリ レフォスコ・ダル・ペドゥンコロ2010」
4.エミリオ・ブルフォン「シャリン・スプマンテ・エクストラ・ドライNV」
5.ポッジョ・アルジェンティエラ「マレンマンテ ロッソ・トスカーナ2014」
6.モンテ・トンド「レチョート・ディ・ソアーヴェ・クラシコ2010」

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↑これがタルディーヴォです。ラディッキオ・ロッソの生産農家の中でもI.G.P認定を受けている農家は全体の5%程、軒数で100軒程しかなくタルディーヴォに限るとさらに少なくなります。その100軒程の農家の中でもベッリア家という農家のタルディーヴォに限定して輸入しているのが現地と強いコネクションを持つ千葉県「ルコラステーション」の畝田謙太郎氏。中田シェフがルコラステーションから仕入れたタルディーヴォの美味しさは想像を超え、ラディッキオ・ロッソの概念を変える驚愕モノです。

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 (左)ストゥッツキーノはタルディーヴォとは無関係ですが中田シェフのスペシャリテの一つであるブーダン・ノワールのテッリーナを。セコンド・ピアットでも登場するチンタ・セネーゼ豚のラルドや生クリームを加えた官能的なまろやさとサルシッチャ状にせずテリーヌ型に詰めて湯煎で加熱するからこそ可能な火入れ調整による滑らかな舌触り。添えられているのは皮付きのまま半切りにして砂糖等は一切加えずそのままオーヴン焼きにした紅玉リンゴとブドウ圧搾汁を煮詰めたヴィンコット。ちなみにアチェート・バルサミコとヴィンコットとの違いは圧搾汁をアルコール発酵させているか否かで前者がアルコール発酵させていて後者はさせていません。
 (右)ヴェネト州のコル・サリスはプロセッコの優れた生産者ですがこのバルバメトはグレラにビアンケッタとヴェルディーゾとペレラをブレンドしているのでプロセッコとは名乗れません。プロセッコよりも安価ですがヴィンテージワインとして販売しているところからも生産者の品質に対する自信が感じられ、BRAVURAでも普段から主力として活躍しているスプマンテなのです。しかも今回はマグナムボトルですよ。ブーダン・ノワールのテッリーナはその濃い色から赤ワインでないと合わないようにも思えますがスパークリングワインとの相性が抜群なのです。

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 (左)生のタルディーヴォをキァンティから造った赤ワインヴィネガーとリグーリア産の有機ヴィネガーで和え、リコッタ・サラータを振り掛けて。振り掛けるチーズは当初はパルミジャーノ・レッジャーノの予定でしたがソムリエ資格も持つ山崎シェフからの「シャリンとの相性を考えるとパルミジャーノよりもリコッタ・サラータの方が良いのでは」との提言を受けて直前にリコッタ・サラータに変えたそうです。生のタルディーヴォは鮮烈です!苦味と甘味との高度なバランス感。今までに食べたことの無い食感、他のどの野菜とも違う、もはや野菜ではない食感。生の野菜を食べて肉厚でジューシーだと感じることがあるなんて。タルディーヴォを練り込んだパーネはタルディ―ヴォの甘味が活きつつズシリと重い。これだけ重量感と存在感のあるパンになるということは国産小麦粉でも使っているのかと思って中田シェフに聞いてみるとピッツァ用の小麦粉を使っているとのこと。
 (右)フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州のエミリオ・ブルフォンはシャリンやフォルジャリン等の地元の絶滅危惧品種の復興に力を注いでいる生産者。どのワインも個性的で美味しいのですが特にシャリンはBRAVURA1周年の時にボトルで開けた思い出深い白ワインです。苦味と膨らみのあるワインでこれがタルディーヴォの苦味&甘味と肉厚ジューシーな食感とアッビナメントしています。

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↑チルコロとは違うと言いつつ参加者がバンコまでプリモ・ピアットをもらいにいくのはチルコロと同様のスタイルで。

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 (左)国産有機米を豚骨と鶏ガラでとったブロードでリゾットにし、米とタルディーヴォとの比率は1:1。あえてシンプルの極致なスタイルに仕上げることでタルディーヴォとブロードの味が際立ちます。染み入る地味滋味系の料理とワインが大好きな私のツボを刺激しまくりなこのリゾットおかわり可能ということでおかわりもペロリと平らげてしまいました。上にのったパルミジャーノ・レッジャーノもエエ熟成してますね。
 (右)フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州のトブラールが僅か2000本しか生産していないレフォスコ・ダル・ペドゥンコロは他のレフォスコ品種よりも実が小さくて色合いがはっきりしているそうです。ステンレスタンク発酵の後に桜とオークの500リットル樽で熟成。ワイン単体で呑むと苦味が甘味よりもやや強いですがリゾットと合わせると口内に甘味が溢れます。

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 (左)生ビールと玉子と水で練った衣を纏い甘味と苦味が両存両立したフリット。生ビールはBRAVURAで提供しているサントリー「ザ・プレミアム・モルツ マスターズ・ドリーム」だとのこと。フリットだけでも最高に美味しいのですが擦り下ろしたボッタルガを付けて食べると口内に海の香りの余韻が残ります。
 (右)先程登場したエミリオ・ブルフォンがシャリンで造ったメトード・シャルマのスプマンテ。揚げ物には泡という黄金の法則に則りつつよくまあこんな超珍品を引っ張り出してきましたな(爆)。超珍品とはいえスティルワインのシャリン程にはらしい特徴は感じずアロマティックで普通に美味しいスプマンテです。

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↑トスカーナ州シエナ名産のチンタ・セネーゼ豚骨付きロース肉塊のアッロースト。チンタ・セネーゼを訳すると「シエナ産のバンド状の縞が入った豚」でその名の通り前足から背中にかけて白い縞が入っている黒豚です。表面に浮き上がった脂分、骨、脂身を取り除くと赤身肉の部分はこの半分程の量になります。

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 (左)さて、左手前のグリルしたタルディーヴォと奥のチンタ・セネーゼ豚とどちらがこの皿の主役でしょう?普通に考えたらチンタ・セネーゼ豚のはずなのですがタルディーヴォの存在感が尋常ではありません!チンタ・セネーゼ豚をアッローストした時に出た脂分をタルディ―ヴォに纏わせてからグリルして仕上げに減塩ペコリーノ・ロマーノを擦り下ろすというシンプルさですが加熱したタルディーヴォの料理3皿の中でもズバ抜けたインパクトがあります。チンタ・セネーゼ豚は赤身肉に表面カリカリに焼いた脂身を一片添えて自家製のサンジョヴェーゼ塩を振り掛けて提供。見事にロゼな火入れの赤身肉はものすごく引き締まった筋肉質!良い豚肉の証拠である脂身の甘さもmolt bene!どちらも主役です。
 (右)トスカーナ州マレンマにあるポッジョ・アルジェンティエラは2013年にスヴェレートの「トゥア・リータ」が買い取ったカンティーナでこの2014年ヴィンテージから全てのワインがトゥア・リータのスタイルになっています。マレンマンテはカベルネ・フラン75%にシラー25%をブレンドしてステンレスタンク発酵&熟成。カベルネ・フランらしい芳しい香りと鉄分がありカベルネ・フランだけだと線が細くなってしまうところをシラーがピリっと引き締めてくれています。トゥア・リータらしい綺麗にまとまった優等生的ワインですね。トスカーナの豚肉とトスカーナの赤ワインとが合わない訳もなく、なかなかに美男美女なカップリングとなっています。

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 (左)メニューにはオープンスタイルのミル・フィーユとありますがイタリア語でミッレ・フォーリアと呼びたいところです。2色のカスタードクリームはグラッパ入りカスタードとイチゴとブルーチーズ入りカスタードの2種類。ブルーチーズは隠し味程度の量のようで言われてみればかすかに感じるような(笑)。
 (右)ソアーヴェ・クラシコ用のガルガネガを4ヵ月間陰干ししてから醸造する甘口ワインがレチョート・ディ・ソアーヴェ・クラシコ。モンテ・トンドはソアーヴェ・クラシコのトップ生産者の一つですからそのレチョートとなれば品質も間違い無いところなのですが瓶差がすごくあります(汗)。私がサーヴされたレチョートと前の人にサーヴされたレチョートとでは色の濃さが同じワインと思えない位に違いますし、テイスティングさせてもらうと味も違っています。私の方は酸味と甘味のバランスが取れた端正なレチョートですが前の人のはシェリーのペドロ・ヒメネスぽかったですね。まぁこの辺りの緩さもイタリア的だなといって皆で笑い飛ばしましたよ。

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↑2日後が御誕生日の中田シェフにタク店長の発案でサプライズなお祝いを!

  正直タルディーヴォを舐めていました。生食と加熱調理との味の違い、加熱調理でも調理方法による味の違い。この美味しさを知ってしまうとタルディーヴォの季節にタルディーヴォを食べないということはできなくなってしまいました。中田シェフ、タク店長、micoソムリエール、山崎シェフという4人のオタク、いやマニアが集まって考えに考え抜かれたコース料理とワインとそのアッビナメント。そしてそれを受け止めたオタク、いやマニアな参加者達。皆さんお見事!!


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