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六甲道に並外れた研究家シェフあり

  最近、イタリア料理とイタリアワイン好きの人達の間でとみに評判を聞くのが六甲道にある「ABBRACCIO&BACIO(アッブラッチォ・エ・バッチォ)」の名前。行った人全員が大絶賛しているのです。個性的過ぎて好き嫌いがはっきり分かれるとかならまだしも誰もが大絶賛とはこれいかに?聞けばオーナーシェフはイタリアで修行してきた訳でもないという。猜疑心の強い私は自分の目と耳と舌とで確認するまではその評判を信じられないと思っていたところその真偽を確かめられる機会が訪れました。前週に三ノ宮「CHEZ CHILO(シェ・シロ)」にお誘い下さったTさんがイタリア旅行土産のハンドキャリーワインを同店に持ち込んでのワイン会にお誘い下さったのです。
 JR六甲道駅から北に5分程行った交差点近くのビルの2階、ターヴォラ14席程とバンコ4席程のコンパクトな店内。マニアックなイタリア好きの面々から大絶賛を受けている中田オーナーシェフはさぞかし自信に満ち溢れたオレオレ的な人なのではないかとやや意地悪な予想をしていたら第一印象で覆されました。小柄で声も小さく、謙虚そうな人という印象。正直そんなにスゴイ人には見えないのですが中田シェフの凄さはこの後に存分に知ることとなるのです。

  今回はTさんのハンドキャリーワイン4本(ピエモンテワイン3本とスイスワイン1本)と中田シェフお薦めワイン2本との合計6本を6人でいただきました。数多のワイン会に参加してきたTさんなだけにここにも配慮がなされています。中田シェフはワインの持ち込みに関して制限を設けていないので持ち込みワインだけのワイン会を開催する人もいるようですが、原則・例外で言うところの例外であるワイン持ち込みをさせてもらう時はお店のワインも開けるのが大人のマナーですし何より中田シェフのセレクトも相当におもしろいのでそちらも楽しまないと勿体無いという訳です。また、参加者の中にワインエキスパート試験の一次筆記試験を突破して二次テイスティング試験に進んでいる人がいるので参考になればとの配慮で4本とも単一品種100%のワインです。

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 (左)南アフリカのグラハム・ベック・ワインズ「ブリュット・ロゼ・ミレジム2010」で乾杯!グラハム・ベック・ワインズは株式会社モトックスが誇る南アフリカのスパークリングワインのトップ生産者なだけにスタンダードなノン・ヴィンテージ物でも十分に美味しいのですが中田シェフも認めるヴィンテージ物となると流石のハイ・クオリティーですね。
 (中央)ピエモンテ州のブルーノ・ジャコーザ「ロエロ・アルネイス2014」。このブルーノ・ジャコーザのワインも株式会社モトックスが日本に輸入していますがまだ2013年ヴィンテージまでしか輸入されておらず2014年ヴィンテージを呑めるのはハンドキャリーならでは。そして日本でも有名なブルーノ・ジャコーザのワインをわざわざイタリアで購入したのには理由があるそうで、イタリア北部マッジョーレ湖畔ストレーザにあるワインショップ「LA CAMBUSA」にTさんが行った時にオーナー女性が八島淳次シェフ(現「DA GIUNGINO」オーナーシェフ)と知り合いでその話でかなり盛り上がり、ブルーノ・ジャコーザのワインを猛プッシュいただいたのだとか。酸と苦味のバランスが取れていて安定した美味しさ、まさに「王道」という言葉が相応しいロエロ・アルネイスでした。
 (右)スイスのマタッシ「セレツィオーネ・ドットーブレ2013 500mlボトル」。抜栓直後の印象は生薬のカンゾウ(甘草)、そこから時間の経過によりアマチャヅルの印象へと変わりどんどん美味しくなっていきます。

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 (左)こちらもブルーノ・ジャコーザで「ドルチェット・ダルバ2012」。ドルチェットとしては酸があり、杉のニュアンスが特徴的です。
 (中央)ピエモンテ州のスカリオーラ「バルベーラ・ダスティ・スーペリオーレ サンシー2011」。ランゲとモンフェッラートとの間に位置するカロッソに本拠を置くカンティーナで、すぐ近くにあるサン・シーロ教会にちなんでサンシーというワイン名が付いているようです。新樽50%と旧樽50%で12ヵ月の樽熟成。スーペリオーレということでアルコール分が14.5%もありかなりボリューミーでグラマラスな印象、そして果実味の凝縮感もスゴイ。バルベーラについてはこういう樽を効かせた凝縮感あるタイプも昔ながらの素朴で地味滋味なタイプもどちらも好きでして前者のタイプであるこのワインも大好きです。
 (右)ロンバルディア州オルトレポ・パヴェーゼのファットリア・モンド・アンティコ「レペルト2012」。薦めてくれた中田シェフも「聞いたことが無い、全然知らないブドウ品種」だと言うモラデッラ100%で、インポーターの株式会社ヴィントナーズに知り合いがいるのでその場からこの写真を送って見せると「レペルトとはなかなかマニアックな~」という反応が(笑)。モラデッラは既に絶滅してしまったと思われていた品種で僅かな生き残りをファットリア・モンド・アンティコの畑にて発見してビオディナミ農法にて栽培、「発見」を意味する単語レペルトをワイン名に冠してこの2012年ヴィンテージよりリリース開始。モラデッラを完熟させるのは非常に難しく、モラデッラ100%でのワインはこのレペルトしか無いようです。最大の特徴は香りの複雑味と重層感。まるで極上のフルーツばかりを盛り合わせたフルーツバスケットのようにいくつものフルーツの香りが何層にも広がってきます。

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↑バルベーラ・ダスティー・スーペリオーレをデキャンタージュする中田シェフ。ボリューミーでグラマラスな印象からソフトな印象へと変化しました。

<おまかせコース料理>
1.白トウモロコシのビアンコ・マンジャーレに2種類のパパド添え
2.自家製パンチェッタとニョッコ・フリット
3.テッリーナ・ディ・‘ブーダン・ノワール’
4.ザンポーネ・ア・ラ・メゾンにレンコンとドライケッパーを添えて
5.トレ・フォルマッジョのニョッキ
6.スコットランド産山鳩のアッロースト
7.ババ
+自家ブドウ酵母のフォカッチャ&セモリナ粉100%のパーネ

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 (左)ビアンコ・マンジャーレはフランス料理のブランマンジェと同じ料理なのですが一皿目からヤラレました。糖分は一切加えずに純粋に白トウモロコシと牛乳のみの甘さ、極少量のゼラチンで冷やし固めてあるのですがその固まり具合がこれ以上柔らかいと液体でこれ以上固まると並のビアンコ・マンジャーレという絶妙の固まり具合なのです。そして添えられたリグーリア産オリーヴオイルも並ではないです。スプーンでオイルだけをすくって舐めてみると舌を刺す程に刺激的なのですがビアンコ・マンジャーレという主役と一緒になることで主役の良さを引き立てる渋い脇役と化しています。インド料理屋に行けば御馴染みのチャナ豆の薄焼き煎餅であるパパドもスパイスが効いていて美味しいです。
 (右)ニョッキを揚げたニョッコ・フリットの温度でパンチェッタの脂身がトロけ出し、塩味も丁度イイです。

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 (左)豚の血入りソーセージと言えばフランス料理のブーダン・ノワール、スペイン料理のモルシージャが有名ですがイタリア料理にもサングイナッチョという豚の血入りソーセージがあります(ナポリではカーニヴァルに食べるドルチェのことをサングイナッチョと呼びますがそのドルチェにもやはり豚の血が入っているそうです)。今回はフランスのブーダン・ノワールをベースにしたテッリーナで、トスカーナ名産チンタ・セネーゼ豚のラルドとイタリア産ニンニクと有機栽培パセリを加えた中田シェフ特製ブーダン・ノワールは物凄く滑らかで上品。豚の血と聞くと拒否反応を起こす人に何も言わないでこの料理を食べさせてみたらおそらく気に入るのではないでしょうか。中田シェフも「豚の血それ自体には味はありません」と言う通り豚の血という言葉から連想されやすい変なクセとかは一切ありませんからね。グラハム・ベックのロゼ泡とアッビナメント・ペルフェット、そして意外にもロエロ・アルネイスとも違和感ありません。
 (右)ザンポーネはエミリア・ロマーニャ州モデナの名物料理でザンポーネもしくはコテキーノをレンティッキエ(=レンズ豆)の煮込みと一緒に食べるのがイタリアの年末年始の定番、日本で言う年越し蕎麦みたいなもの。ザンポーネもコテキーノもどちらも詰め物料理でザンポーネが豚足詰め、コテキーノが腸詰めです。中田シェフのザンポーネは、豚足を煮込んでから骨を取り除き、中に自家製サルシッチャを詰めてオーブンで焼いてあります。CHEZ CHILOでもテット・ド・コションを選択した私はザンポーネももちろん大好きでもっと多くの量を食べたい位です。添えられたレンコンは豚足を煮込んだ時のダシとブロードと魚介ダシとで炊いてあり、まるで根菜ではないような上品な仕上がり。

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↑今年6月の「極みチーズ会 北イタリア編」でも登場したピエモンテ州のベッピーノ・オッチェリ社が作る山羊乳ブルーチーズをメインに牛乳ブルーチーズと羊乳ブルーチーズの3種類のブルーチーズを使ったチーズクリームソースのニョッキ。絶品です。ベッピーノ・オッチェリ社の山羊乳ブルーチーズは日本のイタリア料理人では中田シェフしか使っておらず、しかも生産中止してしまった超レア物です。

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 (左)中田シェフが得意とする山鳩が本日のメイン食材。この日のためにじっくりフザンタージュされています。
 (右)毛を毟り、腹の中を見せてもらいました。胃袋の中には狩られる前に食べた木の実や種が消化されずにそのまんま残っていて、散弾銃の弾丸も初めて見ました。内臓のソースにするんですか?と中田シェフに質問すると「内臓のソースを作るには血が必要となりますがそのためにはソース用に別の山鳩を仕入れてその血を抜くか豚の血で代用しないといけない」との理由でバルサミコ酢ベースのソースにするとのこと。

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↑山鳩の胸肉&腿肉&脳味噌&心臓&砂ズリ&砂ズリの皮のアッロースト。ソースはバルサミコ酢とヴィンコットとリンゴで作ったソース。バルベーラ・ダスティ・スーペリオーレの裏エチケッタにこのワインと合う料理としてセルヴァッジーナ(=ジビエ)が挙げられている通り、まさしくアッビナメント・ペルフェット!半分に割った頭部の内側の甘い脳味噌ももちろん余さずむしゃぶりました。

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↑ドルチェはババで。電車の予定時間が迫っていたのでサクッと食べてしまいじっくり味わう余裕は無かったのですが美味しかったのは間違い無いです。

  ワタシも質問魔な方ですが1の質問に対して中田シェフが2も3も回答してくれるので質問攻勢が加速してネホリーナのハホリーナで根掘り葉掘り質問してしまいました。ここまで料理と食材について研究に研究を重ねている料理人にこれまでお目に掛かったことがありません。多くの料理人が「修行先で教わったことだから」とか「本場ではこうだから」とかでその理由や歴史的意義を紐解くことなく惰性でやっているのではないかとさえ思えてきます。これ程の料理人が失礼ながら六甲道でお店をされているのが不思議なのですが元々は後輩さんがやっていた店舗を譲り受けてのオープンだそうです。
  マニアックなイタリア好き達が大絶賛するのも至極納得の中田シェフの料理の世界観をさらに知りたいと願い、すぐに中田シェフが10月に大阪市内でコラボするワイン会に参加申し込みしました。そちらのワイン会についても後日に紹介します。

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