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ウンブリア郷土料理とウンブリアワインの会@Sassa

  神戸・御崎公園の「Trattoria Sassa(トラットリア・サッサ)」でのイタリア20州の各郷土料理とワインの会の第9回目に参加してきました。今回のテーマはペルージャを州都とするウンブリア州です。イタリアには海に面していない州がこのウンブリア州の他にピエモンテ州とロンバルディア州とトレンティーノ・アルト・アディジェ州とヴァッレ・ダオスタ州の4州ありますが海だけでなく他国との国境にも接していない唯一の内陸州がウンブリア州なのです。

<ワインリスト>
1.ルンガロッティ「ブリュット・ミレジマート2010」
2.ナポリーニ「ヴィーニャ・ディ・クララ グレケット・デイ・コッリ・マルターニ2014」
3.ビジ「オルヴィエート・クラシコ トッリチェッラ2014」
4.ルンガロッティ「ブレッザ・ロザート2014」
5.ランボルギーニ「トレスコーネ ウンブリア・ロッソ」
6.ゴレッティ「サグランティーノ・ディ・モンテファルコ2007」

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 (左)ウンブリア州のスプマンテてあまり聞いたことが無いので今回はスプマンテ無しだろうと踏んでたらちゃんと見つけ出してくるところは流石は佐々木シェフ。ルンガロッティはかって高岡ソムリエ開催の「ルンガロッティな夜」で比較テイスティングした思い入れのあるカンティーナ。シャルドネとピノ・ネロとを50%ずつ使ってメトード・クラシコ(=瓶内二次発酵方式)で仕上げたルンガロッティ渾身のスプマンテにして今回の6種類のワインの中で最も高級なワイン。
 (中央)ヴィーニャ・ディ・クララのクララというのは当主マッテオ・ナポリーニ氏の夫人の名前で、ナポリーニ家は規模は大きくないながらも900年以上のブドウ栽培の歴史のある名家です。心地良い苦味と豊かなミネラル、主催者のSさんが飲んだ瞬間に思わず快哉を叫んだ程にお好みだったみたいです。
 (右)ビジのオルヴィエート・クラシコを呑むのは何と7年10ヵ月振りです。以前に呑んだのはやや甘口のアマービレで今回のトッリチェッラはカンティーナ創設100周年を記念して生まれたオルヴィエート・クラシコ。意外とふくよかでオルヴィエート・クラシコの印象が変わります。

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 (左)同じルンガロッティのワインでも価格で言うとブリュット・ミレジマートの半額程度、サンジョヴェーゼ主体にほの甘くジューシーな仕上がりのロザート。
 (中央)ビジと並んで昔から日本でもお馴染みのカンティーナが高級車メーカーでもあるランボルギーニ。トレスコーネはサンジョヴェーゼとチリエジョーロとメルローをブレンドした同社のスタンダード赤ワイン。50%を占めるサンジョヴェーゼのスミレの香りがよく出ていてメルロー由来と思われるピーマンのような青っぽいニュアンスも感じられます。
 (右)ウンブリアの赤ワインを語る上で絶対に外せないのがサグランティーノ・ディ・モンテファルコ。サグランティーノという品種はモンテファルコ村でしか育たずネッビオーロをも凌ぐ世界最強のタニック品種で飲み頃になるまで長期間を要するものの熟成したサグランティーノはバローロやブルネッロ・ディ・モンタルチーノと並んでイタリア最高峰の美味ワインなのです。なかなかに高価なサグランティーノ・ディ・モンテファルコなのですがこのゴレッティのサグランティーノ・ディ・モンテファルコは例外的に手頃な価格で買えます。アルナルド・カプライやパオロ・ベア、ペルティカイアといったカンティーナのサグランティーノ・ディ・モンテファルコであれば2007年ヴィンテージでもまだまだ飲み頃に遠いところなのですがこれはタンニンも幾分こなれてきていてそこそこ呑みやすい状態になってきています。それでもまだ硬いですけど。当日の朝か昼に抜栓しておいても良かったのに呑む直前の抜栓なのが残念でした。

  海に面していない内陸州ですから使う食材は肉と野菜と豆、そしてオリーヴ・オイル。オリーヴ・オイルはイタリア全土で29ヵ所のエリアがD.O.P(デノミナツィオーネ・ディ・オリージネ・プロテッタの略で原産地保護呼称と訳される)認定を受けていてその内の5ヵ所がウンブリア州内にあります。という訳で今回のコース料理にもオリーヴ・オイルがふんだんに使用されています。

<コース料理>
1.チポッラータ
2.ポッロ・アッラ・カッチャトーラ
3.鶏モツのラグーのウンブリチェッリ
4.タルトゥーフォ・ネロとフンギのタリオリーニ
5.豚フィレの低温アッローストにプレ・ディ・ファーヴェ添え
6.トルコロ

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 (左)チポッラ―タは玉ねぎの卵とじズッパのこと。鶏ガラのブロードに炒めて甘味を引き出した玉ねぎと佐々木シェフのオリジナルで白菜を投入して卵とじにしてあります。
 (右)カッチャトーラは猟師の保存食として獲物をヴィネガーで煮込んで保存性を高めた料理のことを言いますがウンブリア州ではヴィネガーを使いません。なのでこの料理も骨から外した鶏腿肉を煮込むのにヴィネガーを一切使わず鶏のブロードとオリーヴ・オイルとパッサート(=裏漉しトマト)で煮込んであります。骨から出る旨味が無い分ブロードは濃い目に取ってあり、タプナードのようなオリーヴのペーストを付けて食べます。

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 (左)ウンブリチェッリはトスカーナ郷土パスタのピチと同じく手延べで作る極太パスタでその食感はまさにもっちり太うどん。コンフィした鶏の砂肝と香味野菜と大量のオリーヴ・オイルとで造ったラグーと絡めます。ちなみにカッチャトーラで使った鶏ブロードにはこの時の砂肝コンフィの旨味も入っています。
 (右)極太麺から一転して極細麺に。タルトゥーフォ・ネロ(=黒トリュフ)と4種類のキノコ(舞茸&シメジ&エリンギ&マッシュルーム)のソースをアンチョヴィの塩気のみで味付けし、仕上げにトリュフ・オイルも添加しているので風味豊か。

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↑豚肉を盛んに食べるウンブリア州なのでセコンド・ピアットも豚フィレ肉で。乾燥空豆のピューレであるプレ・ディ・ファーヴェとオリーヴのペーストを添えて。

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 (左)トルコロは毎年1/30のサン・コンスタンツォ祭に食べる御菓子で本来はリング型をしています。
 (右)ルンガロッティ「グラッパ・ルベスコ」。ルンガロッティのワインが2種類も出たのでルンガロッティに敬意を表してグラッパもルンガロッティで。

  昨年のイタリア研修旅行ではウンブリア州はほぼ通過しただけで現地の料理には触れなかったと佐々木シェフは言いますが旅行全体を通じてかなりレヴェルアップした腕前が今回も冴えていましたよ。

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ABBRACIO&BACIOが来年から新展開!

  六甲道にあるイタリア料理店「ABBRACIO&BACIO(アッブラッチォ・エ・バッチォ)」が12/27をもって現在の店舗での営業を終えることが正式に発表されました。来年2月からは中田オーナーシェフの地元である垂水での新展開になるためそう簡単に行くことはできず、先日の「ラディッキオ・ロッソ・ディ・トレヴィーゾ・タルディ―ヴォの会」で中田シェフの料理をとくと堪能したばかりですがそれだけに飽きたらず急遽思い立って六甲道まで行って来ました。過去2回の訪問はどちらもTさん主催のハンドキャリーワイン会誕生日前夜祭でしたが今回は1人ですので初めてバンコに座りました。

  この日の主役は二つあります。一つ目が沖縄県の琉球在来豚であるアグー豚のそれも純血豚。沖縄県ではJAおきなわが「あぐー」という平仮名表記を商標登録していてJAおきなわと商標使用許諾契約を締結しないと「あぐー」も「アグー」も表示できないことになっているのですがJAおきなわが定めている「あぐー」の定義は「琉球在来豚アグーの血が50%以上入っていること」であり、必ずしも純血であることが要求されていません。他品種との交雑豚も純血豚も同等に扱われてしまうことに対して反対意見もあり、今回の純血豚はJAおきなわのやり方に問題提起している山本大五郎さんが飼育している豚です。飼育頭数はわずか15頭程で沖縄県外に出荷されることはまずもって無い超貴重な純血豚が山本さんと懇意にしている人を介して中田シェフの元に届けられたのです。

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 (左)ストゥッツキーノはブロッコリーと菜っ葉のアンチョヴィソテー。シンプルながらキレのある仕上がりなのが流石は中田シェフの技量。
 (右)純血アグー豚のコッパ・アッラ・ロマーナにピクルス添え。ちょっと例えがアレかもしれませんが「ういろう」的だなと。見た目もどことなくういろうみたいですしもっちりねっとりとした食感もういろうみたいです。そして自然な甘さがあります。通常のコッパ・アッラ・ロマーナは甘味もほとんど感じないしもっと部位ごとの食感が個々に主張していて豚自体のゼラチンで無理繰り一体化させた感があるのですがこのコッパ・アッラ・ロマーナは完全に一体化して調和しています。中田シェフ曰く「僕は基本的に料理に野菜の出汁は使わず、コントルノ以外でどうしても野菜の味が欲しい時は素材ではなくソースの方に野菜の味を加えます。このコッパ・アッラ・ロマーナも野菜の出汁は一切使わず塩と若干のハーブだけで調味しています。タルディ―ヴォの会で出したチンタ・セネーゼ豚よりもアグー豚の方が脂が日本人向けですね」。成程、この一体感と甘味はアグー豚の脂の質の高さに由来するものなのですね。

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 (左)純血アグー豚マメのサルタート。マメ=腎臓には臭味など全く無く、ピンと立った切り口が鮮度の良さを物語っています。
 (右)純血アグー豚頬肉のパッパルデッレ。ソースがメチャクチャ濃厚で旨味溢れるのに後味サッパリのスパッとしたキレ味は名刀もかくやあらん。中田シェフ曰く「僕はあまりパスタに何か素材を練り込むのは好きではありません。中途半端に練り込んでも風味しませんしどうせやるならたっぷりと練り込まないと。パッパルデッレは麺を短い目にしています、長いと食べてる途中で切らないといけなくなるので(笑)」。確かにパッパルデッレは少し短い目ですね、でも麺の厚みはあります。

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 (左)純血アグー豚ロース肉のアッローストに自家製サンジョヴェーゼ塩を添えて。あえてシンプルにローストにすることでアグー豚の特徴を100%知ることができました。赤身肉はチンタ・セネーゼ豚よりも引き締まった超筋肉質で脂身は口内で一瞬で溶けていき甘味と香りとが余韻に残ります。これまでに上質の豚肉をいくつか食べたことありますがその最高峰に位置する豚肉です!!
 (右)ラディッキオのインサラータ。タルディ―ヴォとカステルフランコの2種類を混ぜてあり、甘味と苦味とのバランスが絶妙。この量ですがムシャムシャと平らげてしまいました。

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 (左)アクアヴィーテのジェラートに焼きリンゴとイチゴ添え。お酒の弱い人は絶対に食べられないであろう究極のオトナのドルチェ(笑)。
 (右)ジェラートに入っているのはこのナルディーニのアクアヴィーテです。ちなみに中田シェフはグラッパとアクアヴィーテは樽熟成させていないビアンカの方がお好きとのこと。

  料理だけでなくワインについても研究熱心な中田シェフお薦めのワインをいただきます。

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 (左)フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州のエミリオ・ブルフォン「シャリン・スプマンテNV」。タルディ―ヴォの会でフリットと合わせたシャリン100%のスプマンテを改めて呑んでみるとやはりよく出来たスプマンテですね。
 (右)ロンバルディア州のカステッロ・ディ・チゴニョーラ「ビアンカ2013」。何と黒ブドウ品種のバルベーラ100%の白ワイン、いわゆるヴィニフィカート・イン・ビアンコというやつです。コッパ・アッラ・ロマーナやマメのサルタートにも負けないがっしりとした骨格とコクがあります。

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↑この日の主役の二つ目がカラブリア州のテヌーテ・フェッロチント「マリオッコ2013」の5リッターボトル。ボトルが大きくなる程ゆっくりと熟成するのでデキャンタしてからいただきます。レギュラーボトルのマリオッコは何度も呑んだことがあり、南イタリアのワインらしく濃厚で甘味あるけど後味サッパリなので呑み疲れないし中華料理とかとも相性良さそうだなとの印象でした。ところがデキャンタした直後の印象は「え!これがマリオッコ!?ブルゴーニュのピノ・ノワールみたい!!」というもの。その後、段々とマリオッコらしい甘味が出てきました。

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 (左)トレンティーノ・アルト・アディジェ州のポイエル・エ・サンドリ「ノジオラ2013」。マリオッコの後ですがラディッキオのインサラータにはこの白ワインが持つ青リンゴ感が合うと思ってあえて順番無視で(笑)。
 (右)同じくポイエル・エ・サンドリ「グラッパ」。珍しいグラッパグラスでいただきます。

  中田シェフと知り合ってまだ3ヵ月しか経っていませんがその間にコース料理を5回食べました、短期間でここまで一人の料理人の料理を食べ込んだのは初めてかもしれません。まさに2015年最大の出会い。垂水のお店にも休みの日の昼間を使って行かなければ!

リグーリア郷土料理とリグーリアワインの会@Sassa

  神戸・御崎公園の「Trattoria Sassa(トラットリア・サッサ)」でのイタリア20州の各郷土料理とワインの会の第8回目に参加してきました。今回のテーマはジェノヴァを州都とするリグーリア州です。9月後半からのイタリア研修旅行でもリグーリア州を回って現地の味を実体験してきた佐々木オーナーシェフが「現地そのもののボリュームと味に仕上がっています」と自信満々のコース料理をいただきます。

  リグーリア州はワイン生産量が非常に少ない州で数年前は日本市場にほとんど流通していないくてたまに見かけてもおいそれとは買えない高価なワインでした。ここ数年でだいぶ流通してきましたがどうしても同じ生産者のワインばかりになるのは止む無し。

<ワインリスト>
1.カンティーナ・チンクエ・テッレ「スプマンテ・ブリュット リウス・マジョールNV」
2.ポッジョ・デイ・ゴルレリ「ヴェルメンティーノ2014」
3.ポッジョ・デイ・ゴルレリ「シクヌス ピガート2013」
4.ルナエ「メア・ローザ」
5.カッシーナ・プライエ「チェルヴォ・ロッソ2009」
6.ルナエ「チルクス リグーリア・ディ・レヴァンテ」

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 (左)かって郷土料理会⑨@LA LANTERNA di GENOVAでも呑んだボスコ&アルバローラ&ヴェルメンティーノの3種類の土着品種ブレンドのスプマンテ。カンティーナ・チンクエ・テッレはラ・スペツィアのチンクエ・テッレ(=五つの村)の一つであるリオマッジョーレ村に本拠を置く協同組合。
 (中央)ディアノ・マリーナにて2003年に創立したポッジョ・デイ・ゴルレリのヴェルメンティーノは稀少なリグーリアワインの中では比較的目にする機会の多い白ワインではないでしょうか。白い花の香り、酸はそこそこで温度が上がるとほのかな甘味が出てきます。12.5%というアルコール分よりも重く感じますね。
 (右)ヴェルメンティーノとピガートとが同じDNAのブドウ品種ということでポッジョ・デイ・ゴルレリの白ワイン同士で比較テイスティング。ヴェルメンティーノよりも香りが強くてやや癖あり、苦味も特徴的。ヴェルメンティーノ同様に結構重く感じるワインで一気に飲み干すことは困難です。

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 (左)ルナエはラ・スペツィアに本拠を置くリグーリアを代表するカンティーナ。ヴェルメンティーノ・ネロ100%で造るこのロザートはジューシーで肉前菜と抜群によく合います。
 (中央)カッシーナ・プライエはリヴィエーラ・ディ・ポネンテに本拠を置くカンティーナ。チェルヴォ・ロッソはロッセーゼ80%とシラー20%のブレンド。2009年ヴィンテージということでやや酸化熟成のニュアンスあり、北イタリアの赤ワインぽくないのは20%入っているシラーの特徴が出ているからか。
 (右)チルクスというワイン名はコロッセオのような円形の競技場のことでエチケッタにも描かれています。ブドウ品種はマッサレータ&アルバロッサ&アリカンテのブレンドで割とアルコールのボリューム感を感じます。

  現地のボリュームを再現と言いつつ「セコンド・ピアットまで用意したら僕でも食べ切れない量になってしまうのでアンティパスト3皿とプリモ・ピアット2皿の構成にしました」と佐々木シェフ。そこにストゥッツキーノとドルチェを加えた全7皿のコースです。

<コース料理>
1.ファリナータ
2.イワシのリモーネ・マリナータとワサビ菜のインサラータ
3.ミネストローネ・アッラ・ジェノヴェーゼ
4.チーマにサルサ・ヴェルデ添え
5.トロフィエ・アル・ペスト・ポルトフィーノ
6.コルゼッティ・アル・ラグー
7.パンドルチェ・ディ・ナターレ

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 (左)いつもの自家製パーネの代わりにストゥッツキーノとしてファリナータが登場。ファリナータはヒヨコ豆の粉で作る薄焼きパンというかクレープのようなリグーリア郷土料理でリグーリア州と隣接するピエモンテ州の一部でも食べられています。佐々木シェフがキアヴァリにあるファリナータで有名な老舗で食べてきたファリナータを再現しました。これまでに「Ombra」「BUN da BUN!!」とでファリナータを食べたことがありますが今回が一番お腹に来ますね。豆豆しくて実に素朴なんですがハマって病み付きになる人が続出(笑)。ヒヨコ豆の粉を水とオリーヴオイルで練って味付けは塩のみ、オーブンで表面をカリッと香ばしく焼き上げるためには結構な量のオリーヴオイルを焼き用に使うはず!?
 (中央)現地だとイワシの身の色が白くなってしまうまでマリネ液に漬けっ放しでメッチャ酸っぱいのですが魚介の鮮度にこだわる神戸らしくイワシの鮮度の良さを活かすためにごく軽くマリネ。
 (右)次に出てくるチーマという肉前菜の茹で汁のブロードをベースにしたジェノヴァ風ミネストローネ。中央にペスト・ジェノヴェーゼが添えてあり見ての通りの具だくさんで中でもオルツォ(=大麦)の食感がアクセントになっています。

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 (左)これがチーマ。本来は仔牛の胸肉に内臓等を詰めた詰め物料理ですが今回は牛肩肉に牛ミンチ肉とピゼッリ(=グリーンピース)と松の実とゆで玉子を詰め物にして2時間茹でてあります。ピエモンテ名物のサルサ・ヴェルデはリグーリアでも御馴染みのソース。このチーマとメア・ローザとのアッビナメントは抜群でした。
 (右)佐々木シェフとスタッフFさんとの二人がかりでも14人分を仕込むのに2時間かかったという自家製トロフィエにポルトフィーノ風ペーストが絡みます。ポルトフィーノ風ペーストとはジェノヴェーゼにフレッシュトマトを加えて煮込んだものでフレッシュトマトが入る分軽い仕上がりになっています。

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↑トロフィエと並ぶリグーリア名物パスタのコルゼッティ・スタンパーティ。強力粉に卵黄を加えて水とオリーヴオイルと白ワインで練った生地を木製スタンパで円形に打ち抜きます。モチモチしたコルゼッティには濃厚なソースが合うのでレバーの入ったコクのあるラグーと。

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↑ナターレに食べるリグーリア風ビスコッティがパンドルチェ、右のグラスの中身はコルッタ「ヴェルドゥッツオ・フリウラーノ」。佐々木シェフがイタリア研修旅行で訪れたコルッタの甘口ワインをサーヴィスしてくれました。

  やはりイタリア現地をリアルに体感してくると料理にも如実に影響されるようでこれまでの佐々木シェフよりもレヴェルアップしていました。

六甲道にて雷鳥コースで祝う誕生日前夜祭

  関西イタリアン界で最も研究熱心な料理人の一人であることに間違い無いのが六甲道「ABBRACCIO&BACIO(アッブラッチォ・エ・バッチォ)」中田オーナーシェフ。9月の初訪問は、研究に研究を重ねた知識と技法によって作り出される料理の数々にまさに衝撃と感動のひと時となりました。その初訪問の時のハンドキャリーワイン会の主催者であるTさんの誕生日前夜祭が再びABBRACCIO&BACIOにて開催されることとなりました。
  料理は中田シェフにおまかせのコース料理、ワインは中書島「Semplice(センプリチェ)」でのランチ会でも秘蔵ワインを持って来て下さる名コレクターMさんのこれまた秘蔵ワインと御崎公園「Trattoria Sassa(トラットリア・サッサ)」の超常連にしてグラッパとカリフォルニアワインをこよなく愛するS御夫妻からの甘口ワイン、そして中田シェフのセレクトワインをいただきます。

<おまかせコース料理>
1.魚介のムースとズッパに鯛の子の塩漬けを添えて
2.塩包み焼きフォアグラとカボスのソルベ
3.タラ白子のフリット
4.ポルケッタ
5.トリッパ・アッラ・フィオレンティーナに焼きポレンタ添え
6.坂越カキの自家製タリオリーニ
7.スコットランド産雷鳥のアッロースト
8.唐辛子入りトルタ・ディ・チョコラートと熟し柿のソルべ

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 (左)ほぼ魚介そのものと言っていい程に魚介の味が濃いムースを同じく魚介出汁のズッパに浮かべて。添えられた鯛の子の塩漬けは日本酒の熱燗とも相性抜群だろうと思ったら中田シェフは日本酒も大好きとのこと。
 (右)カンパーニア州のフィオーレ・ロマーノ「ファランギーナ・ポンペイアーノ・フリッツァンテ2013」。中田シェフお薦めの微発泡ワインで乾杯!フィオーレ・ロマーノはワインの自社瓶詰めを始めたのは1995年とまだ歴史が浅いもののブドウ園としての歴史は100年以上あり、地元愛を込めてエチケッタにはヴェズーヴィオ火山とそこから出土するアンフォラを描いてあります。ファランギーナ100%なので特有のトロピカルなニュアンスを予想していたら予想に反して穏やかかつ爽やかなアロマですっきりドライです。

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 (左)フォアグラの塩包み焼きは中田シェフのスペシャリテの一つ。
 (右)フォアグラを酸味が超鋭角なカボスのソルベと一緒に一口で食べます。フォアグラに甘口ワインのジュレを合わせる前菜は食べたことありますがこういう尖った酸味と合わせるアプローチは初めてです。

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 (左)フリットと言うよりも達人の揚げる天ぷらのようなしっとり感のあるタラ白子。添えられているのは、手前から反時計回りにジェノヴェーゼ&ペペローニ&サンマの肝&熟成日本酒の塩。
 (右)ピエモンテ州トルトーナのカシーナ・イ・カルピーニ「コッリ・トルトネージ ティモラッソ2013」。株式会社アズマコーポレーションの新着ワインの中で特に気になっていたワインを中田シェフが仕入れてくれていました。ティモラッソはトルトーナの土着品種でワイン自体の生産本数が非常に少なくて日本でなかなか見かけることができず、見かけてもかなり高価です。しかしそれだけの価値のあるワインです。個人的にはティモラッソともう一つロッセーゼ・ビアンコという土着品種こそがピエモンテ最上の長期熟成型白ワインになるブドウ品種だと思っています。ピエモンテの土着品種の辛口白ワインと言うとガヴィとロエロ・アルネイスが有名ですがティモラッソとロッセーゼ・ビアンコの前では霞んでしまいますよ。このカシーナ・イ・カルピーニのフラッグシップワインである「ブレッザ・デステーテ コッリ・トルトネージ ティモラッソ」は上代6千円程と高価なのですがスタンダードなコッリ・トルトネージだとその半額以下なのです。希少なティモラッソがそんな値段で買えると知れば気にならない訳がありません。両方を試飲したことがある中田シェフ曰く「ブレッザ・デステーテはガッチガチに硬くて開くまで時間が掛かるので8人で分けて飲むには適していません。今飲むにはコッリ・トルトネージの方ですがそれでも結構硬いです」。大き目のグラスで温度を上げながらゆっくり呑むことになりましたが期待以上の美味しさ!確かに硬いです、白いネッビオーロと言っていい程に長期熟成のポテンシャルを持ったワインです。

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 (左)これまた中田シェフのスペシャリテの一つのポルケッタ。
 (右)スペイン料理のコチニージョ(=仔豚の丸焼き)と共通する皮目がパリパリっと香ばしくトロ~リとした皮下脂肪とのコントラストが絶妙!他店のポルケッタとは全然違います!!添えられているのは引き割りの豆をブロードとパンチェッタの皮とで炊いたもの。

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 (左)トリッパもまたこれまでに無い程に上品で洗練されています。下処理を怠ると臭味が出るトリッパが料理人によってはここまで上品で洗練された料理になり得ることを知りました。
 (右)フランスのシャンパーニュ地方ディジー村のアラン・ベルナール「シャンパーニュ・ブリュット ロゼ・ド・セニエNV」。肉料理にも合うシャンパーニュとしてMさんが持って来てくれ、これはもうロゼのシャンパーニュと言うよりも発泡している赤ワインとしか言いようの無い強烈な果実味と骨格!軽い前菜や魚料理ならシャンパーニュに負けてしまいます、合わせるのは肉ですよ肉、という訳でトリッパとバッチリ。

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 (左)中田シェフが最も美味しいと思う坂越産のカキとルッコラとフレッシュトマトのタリオリーニにリコッタ・サラータを振り掛けて。カキの産地による味の違いに詳しくないのですが坂越産カキは味が凝縮されていてメチャクチャ美味しいですね。私が生ガキ食べられないことを知っている中田シェフから随分と気を遣っていただきましたが、ハイ、加熱したカキなら大丈夫で美味しくいただきました。
 (右)自家酵母のパーネ。ソースを残さず拭うための必需品です。

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↑フランスのローヌ地方のギガル「エルミタージュ1990」「エルミタージュ1991」。Mさんが雷鳥に合わせるワインとして事前にお店に運び込んでいたとっておき古酒2本。大のシラー好きで「ローヌ卿」の異名を持つHさんもいてるのでこれ以上のワインは無いですよね。Mさんが抜栓するのを横で見ていると意外なことにコルクが綺麗なままなのです。20年以上も熟成しているとコルクもフカフカになっているはずでこんなに綺麗なコルクということはリコルクしたんだろうという話になりました。
  1991年ヴィンテージは柔らかく甘美でスモーキーフレーヴァーが心地良し。ブルゴーニュ好きのローヌ嫌いな人でもこのワインなら好んで飲めるはず。1990年ヴィンテージはこれぞ偉大なるローヌの古酒という威厳とタンニンがあってまだまだ熟成しますね。醤油煎餅の醤油が焦げたような匂いが堪りません。

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 (左)この日のために1ヵ月前から熟成させていたスコットランド産の雷鳥。ワイルドな匂いが立ち昇ってきます。鳩や蝦夷鹿、イノシシはよく食べますが雷鳥となるとかってあった四天王寺「Petit Souple(プティ・スープル)」で食べて以来7年振りとなります。
 (右)シャントレルとブラックトランペットとマディラのクリームソースを纏った雷鳥さまのおな~り~。その身はとてつもなく鉄分に満ち溢れ、エルミタージュ1990と合わせるとワインのタンニンが甘く感じる程です。

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 (左)唐辛子がしっかりと効いた大人のチョコレートケーキ。Tさんのプレートはもちろん「Buon Compleanno(ブォン・コンプレアンノ=お誕生日おめでとう)」のチョコ文字入りです。
 (右)ドイツのラインヘッセン地方の「オストフォーヘナー・キルシュベルク・トロッケンベーレン・アウスレーゼ1989」。オルテガ100%のベルリンの壁崩壊の年の極甘口ワインです。

  仕事でフランスとイタリアによく行くKさんのイタリア土産がこれまた珍品です。

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 (左)タバコの箱?
 (中央)開けてみるとタバコではなく何かアンプルのような小瓶が10本入っています。
 (右)何と5mlサイズの携帯用飲み切りグラッパなのです!アルコール分は50%もあるのでこれ位の量で丁度良いかもしれません。中身はちゃんと美味しいグラッパです。

  先日は中田シェフが大阪市内まで出張して来て料理を作るというワイン会に参加しましたがやはり中田シェフの料理は中田シェフの城であるABBRACCIO&BACIOで食べるのがベストですよね。とは言いつつ12月にまた中田シェフが大阪市内まで出張して料理を作るイベント企画が進んでいるそうで、そこのお店は厨房設備も整っていますし外部から料理人を招くことにも慣れているお店なので先日のワイン会のようにオペレーション不具合の問題は無いはずです。

  美味なる物の追及に心血を注いでおられるTさんの誕生日前夜祭なだけに料理もワインもメンバーもそしてイタリア土産までもが並外れた濃い~モノ&ヒト揃いとなりました。Tさん、改めましてお誕生日おめでとうございます。

六甲道に並外れた研究家シェフあり

  最近、イタリア料理とイタリアワイン好きの人達の間でとみに評判を聞くのが六甲道にある「ABBRACCIO&BACIO(アッブラッチォ・エ・バッチォ)」の名前。行った人全員が大絶賛しているのです。個性的過ぎて好き嫌いがはっきり分かれるとかならまだしも誰もが大絶賛とはこれいかに?聞けばオーナーシェフはイタリアで修行してきた訳でもないという。猜疑心の強い私は自分の目と耳と舌とで確認するまではその評判を信じられないと思っていたところその真偽を確かめられる機会が訪れました。前週に三ノ宮「CHEZ CHILO(シェ・シロ)」にお誘い下さったTさんがイタリア旅行土産のハンドキャリーワインを同店に持ち込んでのワイン会にお誘い下さったのです。
 JR六甲道駅から北に5分程行った交差点近くのビルの2階、ターヴォラ14席程とバンコ4席程のコンパクトな店内。マニアックなイタリア好きの面々から大絶賛を受けている中田オーナーシェフはさぞかし自信に満ち溢れたオレオレ的な人なのではないかとやや意地悪な予想をしていたら第一印象で覆されました。小柄で声も小さく、謙虚そうな人という印象。正直そんなにスゴイ人には見えないのですが中田シェフの凄さはこの後に存分に知ることとなるのです。

  今回はTさんのハンドキャリーワイン4本(ピエモンテワイン3本とスイスワイン1本)と中田シェフお薦めワイン2本との合計6本を6人でいただきました。数多のワイン会に参加してきたTさんなだけにここにも配慮がなされています。中田シェフはワインの持ち込みに関して制限を設けていないので持ち込みワインだけのワイン会を開催する人もいるようですが、原則・例外で言うところの例外であるワイン持ち込みをさせてもらう時はお店のワインも開けるのが大人のマナーですし何より中田シェフのセレクトも相当におもしろいのでそちらも楽しまないと勿体無いという訳です。また、参加者の中にワインエキスパート試験の一次筆記試験を突破して二次テイスティング試験に進んでいる人がいるので参考になればとの配慮で4本とも単一品種100%のワインです。

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 (左)南アフリカのグラハム・ベック・ワインズ「ブリュット・ロゼ・ミレジム2010」で乾杯!グラハム・ベック・ワインズは株式会社モトックスが誇る南アフリカのスパークリングワインのトップ生産者なだけにスタンダードなノン・ヴィンテージ物でも十分に美味しいのですが中田シェフも認めるヴィンテージ物となると流石のハイ・クオリティーですね。
 (中央)ピエモンテ州のブルーノ・ジャコーザ「ロエロ・アルネイス2014」。このブルーノ・ジャコーザのワインも株式会社モトックスが日本に輸入していますがまだ2013年ヴィンテージまでしか輸入されておらず2014年ヴィンテージを呑めるのはハンドキャリーならでは。そして日本でも有名なブルーノ・ジャコーザのワインをわざわざイタリアで購入したのには理由があるそうで、イタリア北部マッジョーレ湖畔ストレーザにあるワインショップ「LA CAMBUSA」にTさんが行った時にオーナー女性が八島淳次シェフ(現「DA GIUNGINO」オーナーシェフ)と知り合いでその話でかなり盛り上がり、ブルーノ・ジャコーザのワインを猛プッシュいただいたのだとか。酸と苦味のバランスが取れていて安定した美味しさ、まさに「王道」という言葉が相応しいロエロ・アルネイスでした。
 (右)スイスのマタッシ「セレツィオーネ・ドットーブレ2013 500mlボトル」。抜栓直後の印象は生薬のカンゾウ(甘草)、そこから時間の経過によりアマチャヅルの印象へと変わりどんどん美味しくなっていきます。

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 (左)こちらもブルーノ・ジャコーザで「ドルチェット・ダルバ2012」。ドルチェットとしては酸があり、杉のニュアンスが特徴的です。
 (中央)ピエモンテ州のスカリオーラ「バルベーラ・ダスティ・スーペリオーレ サンシー2011」。ランゲとモンフェッラートとの間に位置するカロッソに本拠を置くカンティーナで、すぐ近くにあるサン・シーロ教会にちなんでサンシーというワイン名が付いているようです。新樽50%と旧樽50%で12ヵ月の樽熟成。スーペリオーレということでアルコール分が14.5%もありかなりボリューミーでグラマラスな印象、そして果実味の凝縮感もスゴイ。バルベーラについてはこういう樽を効かせた凝縮感あるタイプも昔ながらの素朴で地味滋味なタイプもどちらも好きでして前者のタイプであるこのワインも大好きです。
 (右)ロンバルディア州オルトレポ・パヴェーゼのファットリア・モンド・アンティコ「レペルト2012」。薦めてくれた中田シェフも「聞いたことが無い、全然知らないブドウ品種」だと言うモラデッラ100%で、インポーターの株式会社ヴィントナーズに知り合いがいるのでその場からこの写真を送って見せると「レペルトとはなかなかマニアックな~」という反応が(笑)。モラデッラは既に絶滅してしまったと思われていた品種で僅かな生き残りをファットリア・モンド・アンティコの畑にて発見してビオディナミ農法にて栽培、「発見」を意味する単語レペルトをワイン名に冠してこの2012年ヴィンテージよりリリース開始。モラデッラを完熟させるのは非常に難しく、モラデッラ100%でのワインはこのレペルトしか無いようです。最大の特徴は香りの複雑味と重層感。まるで極上のフルーツばかりを盛り合わせたフルーツバスケットのようにいくつものフルーツの香りが何層にも広がってきます。

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↑バルベーラ・ダスティー・スーペリオーレをデキャンタージュする中田シェフ。ボリューミーでグラマラスな印象からソフトな印象へと変化しました。

<おまかせコース料理>
1.白トウモロコシのビアンコ・マンジャーレに2種類のパパド添え
2.自家製パンチェッタとニョッコ・フリット
3.テッリーナ・ディ・‘ブーダン・ノワール’
4.ザンポーネ・ア・ラ・メゾンにレンコンとドライケッパーを添えて
5.トレ・フォルマッジョのニョッキ
6.スコットランド産山鳩のアッロースト
7.ババ
+自家ブドウ酵母のフォカッチャ&セモリナ粉100%のパーネ

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 (左)ビアンコ・マンジャーレはフランス料理のブランマンジェと同じ料理なのですが一皿目からヤラレました。糖分は一切加えずに純粋に白トウモロコシと牛乳のみの甘さ、極少量のゼラチンで冷やし固めてあるのですがその固まり具合がこれ以上柔らかいと液体でこれ以上固まると並のビアンコ・マンジャーレという絶妙の固まり具合なのです。そして添えられたリグーリア産オリーヴオイルも並ではないです。スプーンでオイルだけをすくって舐めてみると舌を刺す程に刺激的なのですがビアンコ・マンジャーレという主役と一緒になることで主役の良さを引き立てる渋い脇役と化しています。インド料理屋に行けば御馴染みのチャナ豆の薄焼き煎餅であるパパドもスパイスが効いていて美味しいです。
 (右)ニョッキを揚げたニョッコ・フリットの温度でパンチェッタの脂身がトロけ出し、塩味も丁度イイです。

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 (左)豚の血入りソーセージと言えばフランス料理のブーダン・ノワール、スペイン料理のモルシージャが有名ですがイタリア料理にもサングイナッチョという豚の血入りソーセージがあります(ナポリではカーニヴァルに食べるドルチェのことをサングイナッチョと呼びますがそのドルチェにもやはり豚の血が入っているそうです)。今回はフランスのブーダン・ノワールをベースにしたテッリーナで、トスカーナ名産チンタ・セネーゼ豚のラルドとイタリア産ニンニクと有機栽培パセリを加えた中田シェフ特製ブーダン・ノワールは物凄く滑らかで上品。豚の血と聞くと拒否反応を起こす人に何も言わないでこの料理を食べさせてみたらおそらく気に入るのではないでしょうか。中田シェフも「豚の血それ自体には味はありません」と言う通り豚の血という言葉から連想されやすい変なクセとかは一切ありませんからね。グラハム・ベックのロゼ泡とアッビナメント・ペルフェット、そして意外にもロエロ・アルネイスとも違和感ありません。
 (右)ザンポーネはエミリア・ロマーニャ州モデナの名物料理でザンポーネもしくはコテキーノをレンティッキエ(=レンズ豆)の煮込みと一緒に食べるのがイタリアの年末年始の定番、日本で言う年越し蕎麦みたいなもの。ザンポーネもコテキーノもどちらも詰め物料理でザンポーネが豚足詰め、コテキーノが腸詰めです。中田シェフのザンポーネは、豚足を煮込んでから骨を取り除き、中に自家製サルシッチャを詰めてオーブンで焼いてあります。CHEZ CHILOでもテット・ド・コションを選択した私はザンポーネももちろん大好きでもっと多くの量を食べたい位です。添えられたレンコンは豚足を煮込んだ時のダシとブロードと魚介ダシとで炊いてあり、まるで根菜ではないような上品な仕上がり。

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↑今年6月の「極みチーズ会 北イタリア編」でも登場したピエモンテ州のベッピーノ・オッチェリ社が作る山羊乳ブルーチーズをメインに牛乳ブルーチーズと羊乳ブルーチーズの3種類のブルーチーズを使ったチーズクリームソースのニョッキ。絶品です。ベッピーノ・オッチェリ社の山羊乳ブルーチーズは日本のイタリア料理人では中田シェフしか使っておらず、しかも生産中止してしまった超レア物です。

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 (左)中田シェフが得意とする山鳩が本日のメイン食材。この日のためにじっくりフザンタージュされています。
 (右)毛を毟り、腹の中を見せてもらいました。胃袋の中には狩られる前に食べた木の実や種が消化されずにそのまんま残っていて、散弾銃の弾丸も初めて見ました。内臓のソースにするんですか?と中田シェフに質問すると「内臓のソースを作るには血が必要となりますがそのためにはソース用に別の山鳩を仕入れてその血を抜くか豚の血で代用しないといけない」との理由でバルサミコ酢ベースのソースにするとのこと。

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↑山鳩の胸肉&腿肉&脳味噌&心臓&砂ズリ&砂ズリの皮のアッロースト。ソースはバルサミコ酢とヴィンコットとリンゴで作ったソース。バルベーラ・ダスティ・スーペリオーレの裏エチケッタにこのワインと合う料理としてセルヴァッジーナ(=ジビエ)が挙げられている通り、まさしくアッビナメント・ペルフェット!半分に割った頭部の内側の甘い脳味噌ももちろん余さずむしゃぶりました。

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↑ドルチェはババで。電車の予定時間が迫っていたのでサクッと食べてしまいじっくり味わう余裕は無かったのですが美味しかったのは間違い無いです。

  ワタシも質問魔な方ですが1の質問に対して中田シェフが2も3も回答してくれるので質問攻勢が加速してネホリーナのハホリーナで根掘り葉掘り質問してしまいました。ここまで料理と食材について研究に研究を重ねている料理人にこれまでお目に掛かったことがありません。多くの料理人が「修行先で教わったことだから」とか「本場ではこうだから」とかでその理由や歴史的意義を紐解くことなく惰性でやっているのではないかとさえ思えてきます。これ程の料理人が失礼ながら六甲道でお店をされているのが不思議なのですが元々は後輩さんがやっていた店舗を譲り受けてのオープンだそうです。
  マニアックなイタリア好き達が大絶賛するのも至極納得の中田シェフの料理の世界観をさらに知りたいと願い、すぐに中田シェフが10月に大阪市内でコラボするワイン会に参加申し込みしました。そちらのワイン会についても後日に紹介します。