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親父のトスカーナ食堂

 大阪でトスカーナ料理と言うと北浜「LE BOIS vinvino(ル・ボワ ヴァンヴィーノ)」のみさシェフの小柄な細腕から生み出される骨太トスカーナ料理がお気に入りですが、今回は正反対の大柄でイカツイ男性シェフによる剛腕骨太なトスカーナ料理のお店に初訪問してきました。そのお店とは西天満のアメリカ総領事館のすぐ近くのビル地下にある「Rosticceria da Babbo(ロスティッチェリア・ダ・バッボ)」です。
  babboとはトスカーナ方言で「親父」のこと、rosticceriaとは直訳すると総菜屋を意味するのですがここでは総菜屋的な身近な食堂としての意味合いでまさに「親父の食堂」。親父こと高島オーナーシェフは「PIANO PIANO」グループの出身で独立前に淀屋橋の「ANTICA OSTERIA Dal POMPIERE(アンティカ・オステリア・ダル・ポンピエーレ)」のシェフを務めていた当時に一度だけワイン会でコース料理をいただいたことがあります。そのワイン会は記事にしていないのですがまさにド直球の郷土料理コースだったことを今でも覚えています。

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ロベルト・ピビリ画伯に描いてもらったシャッターの絵は閉店時にしか見ることができません。

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 (左)アンティパスト・ミスト・メッツォ。バンコ上に並べられた野菜の前菜をサッと盛って提供するのはPIANO PIANOスタイル。
 (右)アフェッタート・ミスト・メッツォ。Babbo名物の一つであるクロスティーニ・ディ・フェガティーニが含まれるこれは外せません。みさシェフや和歌山「Caratello(カラテッロ)」こーじシェフのフェガティーニも美味ですが高島シェフのフェガティーニはまさに異質です。ここまで鶏肝の形が残っているフェガティーニを他に知りません。「フェガティーニってそもそも漉すもんじゃないですからね~」と言いながら包丁で叩くジャスチャーをする高島シェフ、まさに叩き砕いた感じ。

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 (左)自家製パーネ・トスカーノ。焼き上がってから最低でも一晩以上は寝かせて提供しているそうで参考までに今日焼き上がった分と食べ比べをさせてもらうと水分量の違いによる柔らかの差が顕著です。パーネ単独で食べるなら焼いて間も無い方が柔らかくて食べやすいのですが料理と一緒に食べるなら寝かせて水分を飛ばした方がソースをよく吸ってくれます。
 (右)パッパ・アル・ポモドーロ。「パンのお粥さんですね~」との高島シェフの説明通り余ったパーネ・トスカーノをトマトで煮込んで作るフィレンツェ名物のパン粥です。同じく余ったパーネ・トスカーノを煮込んで作るリボッリータとの違いはトマトの有無。

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 (左)トスカーナ風ラグーを添えたポレンタ。パッパ・アル・ポモドーロ同様にこちらも食べていてほっこりした気持ちになれます。
 (右)宮崎産赤牛のタリアータ。Babboの名物肉料理はビステッカではなくこのタリアータなのです。標準量は250gなところ今回はこれ以上少ないと美味しく焼くのが難しくなるギリギリの量である3分の2の量に抑えてもらいましたが標準量でもペロリと平らげられたであろう美味しさ。

  ワインもトスカーナ産を常備するのが難しいスプマンテ以外はトスカーナ産で揃えられています。
  まさしくここは見た目はイカツイけれども心根の優しい親父が作り出す質実剛健なトスカーナ料理をお腹いっぱい食べる「親父のトスカーナ食堂」でした。


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ラム料理とワイン・ダイヤモンズのワインに浸るパーティー

  昨年10月に西天満「Chi-Fu(シーフ)」「Az(アズ)」の二店舗ブチ抜きで開催されたイベントがさらにパワーアップして帰ってきました(昨年のイベントの詳細は「オーストラリアからのナチュール旋風」を参照)。前回はワイン・ダイヤモンズ株式会社の主軸3生産者である「ルーシー・マルゴー」「ヤウマ」「ショブルック」の各オーナーを招いて彼らのワインとパーティーフードをワイワイ楽しむパーティーでしたが今回は生産者自体は来ないもののワイン・ダイヤモンズ取り扱いの色んな生産者のワインとラム料理とを楽しむパーティーです。
  ナチュール好きを自認自称する人ならば今やワイン・ダイヤモンズのワインを知らないとモグリと言われても仕方無いかも!?逆にナチュールが好きでない人ならむやみやたらに手を出してほしくないですね。日頃からナチュールに慣れている人でないと理解不能というか既存常識を超えたワインばかりですから。最近ワイン・ダイヤモンズのワインにどハマりしている知人女性など「エシュゾーなんかよりもワイン・ダイヤモンズのワインの方がイイ!」と過激発言してはりました(一体どこのドメーヌのエシュゾーと比較しての発言なのかは不明ですが・・・)。

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↑意図的に14時~17時30分というランチタイムとディナータイムとの間の時間帯での開催なので料理人やソムリエの人も多数参加するのがこのシリーズの大きな特徴。

  ワイン・ダイヤモンズのワインの熱狂的ファンのChi-Fu田代マネージャーソムリエによりセレクトされた生産者はこちら↓もしかしたら漏れがあるかもしれませんが。。。

<オーストラリア>
 ルーシー・マルゴー
 ヤウマ
 ショブルック
 パトリック・サリヴァン
 カスターニャ
 ウィリアム・ダウ二ー
 サウザンド・キャンドルズ
 トーマス・ワインズ
 シィ・ヴィントナーズ
 オコタ・バレル
 マイヤー
 ルーク・ランバート
 ラ・ヴィオレッタ
 ジャムシード
 ジェントル・フォーク
 ビトウィーン・ファイヴ・ベルズ
 コミューン・オブ・ボタン
 ファー・ライジング/バイ・ファー
 フレデリック・スティーヴンソン
<NZ>
 ザ・ハーミット・ラム

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↑1階Chi-Fuでワインブースを担当する田代マネージャーソムリエ。

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↑地下Azでワインブースを担当するワイン・ダイヤモンズの尾崎GM。

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↑全てのワインを撮り切れないので一部抜粋。

  改めてルーシー・マルゴー、ヤウマ、ショブルックの三巨頭のワインが頭一つ二つと抜けているなと感じました。

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 (左)ルーシー・マルゴー「モノミース・オン・マーブル・ヒル・ロード・エステート ピノ・ノワール2014」。これはもう美味過ぎて唸ると言うか、本当に凄まじく美味しく感じました。この近年で最も感動したピノ・ノワールと言っても過言では無いかも。
 (中央)ヤウマ「ムリシナイデ2015」。2014年ヴィンテージを「たこりき」でも呑んだことありますが2014年ヴィンテージはシュナン・ブランとゲヴュルツトラミネールのブレンドでこの2015年ヴィンテージはゲヴュルツトラミネール100%に変わっています。そして今日呑んだ2015年ヴィンテージの方が格段に美味しく感じました。これはもう呑まずにおれない、無理しないで言われても無理してでも呑んでまうがな。
 (左)ショブルック「プールサイド2015」。プールサイドで気楽に呑むようなワインという意味ではなくフランスのジュラ地方の土着品種プールサールのような薄旨系赤ワインをイメージして作って言葉遊びでプールサイドと名付けたというもの。色と味は薄くても心に残る印象は濃い~です。

  ワイン・ダイヤモンズのワインは数も少ないし単価も安くないのでワインのテイスティングだけでも会費分の元手を取れる位ですがどうせならフードも美味しい物を食べたいところ。正直な話、前回はパーティーフードがもう一つな印象でしたが今回はラムバサダー2名体制でフードのレベルが格段にアップしています。

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 (左)前菜盛りの中でもチャーシューが秀逸。
 (中央)多くの料理人達を驚嘆させた初耳初見のラムの生ハム。ラムバサダー東澤氏に聞くとドイツ式の製法とのこと。
 (右)ラムの生ハム、ラムのサラミ、ラムドッグ。

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 (左)超珍品のラムジュース。ラムの上湯に空豆ピューレとパクチーを加えてあるそうで青汁みたいな色に怯みますが飲んでみるとまんまパクチーの風味爆発です。美味しくないこともないのですが1回飲んだらもう十分ですね(笑)。
 (中央)ラム水餃子。
 (右)ラムクレープ。

  楽し過ぎて3時間30分経つのがアッという間で気が付いたらもう閉会の時間になっていました。

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↑東澤氏と梁氏の二人のラムバサダーに惜しみない拍手が送られてお開き。

火曜日会:西天満公園傍でのランデヴー

  先週の火曜日会は1人欠員での3人での「虹の仏」詣ででしたが今週は4人勢揃いしての正式な火曜日会の開催、3月の「DiVA」からの流れで今月もオーナーシェフ一人営業のビストロに行ってきました。西天満公園沿いにある「Rendez-Vous des amis(ランデヴー・デザミ)」です。

  DiVA同様に店内にはコントワール(=カウンター)席は無くてターブル(=テーブル)席のみ。この日は勤め先のレストランが定休日で臨時ヘルプに入っているという男性がサーヴィスを担ってくれましたが基本的に大谷オーナーシェフ一人での営業なのでオーダーも紙に書いて渡すシステムです(天神橋筋商店街にある大衆寿司店「春駒」みたいだな・・・汗)。

  前菜を4皿、主菜を2皿、デセールを4皿オーダーしてシェアします。

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 (左)アミューズはラディッシュを塩で。ラディッシュの辛味が心地良くもありますがアミューズとしてはちょっと拍子抜けする位なシンプルさかも・・・。
 (右)自家製リュスティック。リュスティックとは水分が多くて成形しにくいパン生地を分割してそのまま成形せずに二次発酵して焼き上げたフランスパンを言います。かなりどっしりとしたパンで食べ応え大アリ。

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 (左)福岡県合馬産タケノコと生ハムのサラダに新玉ねぎのヴィネグレット。一人でもペロリと食べられてしまえそうなセンスの良い味付け。
 (右)グルヌイユのソテーとレンコンのニョッキ。フレンチではド定番のカエル腿肉も日本のビストロではなかなかお目に掛かれないのでメニューを見て視線釘付けになりましたよ。ヴィネガーをベースにした酸味の効いたソースとの絡みも良くて前菜4皿の中ではこれがベストでした。

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 (左)天草梅肉ポークのパテ・ド・カンパーニュにピクルス添え。パテは普通に美味しいですがピクルスが未だかって無い酸っぱさ!
 (右)イチゴでマリネしたフォアグラのテリーヌ。Sくんからはイチゴのコンフィチュール添えるのならフォアグラ自体をイチゴでマリネするのは不要なのではないかとの意見が出ました。

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 (左)ハンガリー産仔ウサギの煮込みにわらび添え。ソースの切れ味が良いのでサラッとペロッと食べられてしまいます。
 (右)仔羊とフォアグラのパータ・フィロ包み焼き。三等分にカットしてのサーヴだと4人でシェアしにくいですがな汗。それと仔羊はやはりそのままローストした方が美味しいなというのが正直な感想。

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 (左)イチゴのミルフィーユ。大のイチゴ好きのG子氏のお目当てがコレ。他のデセールの倍近い値段ですがそれ相応の値打ちはありますね。
 (右)ヌガー・グラッセ。ヌガー・グラッセはついついどうしても三ノ宮「CHEZ CHILO」のヌガー・グラッセと比べてしまいます。ここのヌガー・グラッセも悪くないのですがCHEZ CHILOのヌガー・グラッセが美味し過ぎますね・・・。

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 (左)パン・ペルデュ。
 (右)梅酒入りの生チョコ。他のデセールのレベルからするとこれはちょっとハズレだなというのが全員の一致した意見・・・汗汗。

  ワインはグラスのヴァン・ムスーで乾杯してからボトルで白赤1本ずつオーダー。

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 (左)ロワール地方のドメーヌ・デュ・プティ・メトリ「サヴニエール クロ・ド・ラ・マルシェ2012」。Sくんがシュナン・ブラン好きなのでただそれだけの理由でこれを選びましたが結果的に大当たり!丸味と濃度があるのでフォアグラのテリーヌとも合いますしね。
 (右)ローヌ地方のジャンリュック・コロンボ「クローズ・エルミタージュ レ・フェ・ブリューヌ2013」。これもSくんがクローズ・エルミタージュが割かし好きだと言うのでただそれだけの理由で選んだのですが結果的にやはり正解(笑)。

  大谷オーナーシェフは「HAJIME」米田肇オーナーシェフや「Le Sucre-Coeur」岩永オーナーと同時期にフランスで修行していて今でも親交があるようですが超有名人の両名とは対照的に根っからの職人気質でクローズドキッチンにてただただ調理に専念していたいというタイプとお見受けしました。G子氏の話では昼の1000円ランチがスゴイ充実した内容で大人気とのことですが手抜きできないのでしょうね。DiVAが一人営業のビストロとして完成されているのであれ程の衝撃は無かったですが好感の持てるビストロです。


VARD RHYTHM素材料理とまゆみさんお疲れ様

  先日の「5ヵ国ピノ・ノワール会@Linea7」を開催したまゆみさんがスタッフとして勤めている西天満「「vegemanma VARD RHYTHM(ベジマンマ ヴァード・リズム)」を今月で退職することとなり、退職前にディナーに行って来ました。ランチでは何度も訪問していますがディナーはかなり酔っている時に行ったことがあるだけで素面できちんと食事したことが無かったので良い機会という訳です。

  かって一世を風靡したイタリア料理店グループ「al Centro(アル・チェントロ)」出身の廣瀬店長の料理の腕前の確かさは昨年に食べたツキノワグマ料理でもしっかり確認済み。イタリア料理ではなく「素材料理」と銘打ったメニューには日本全国の特選素材を使った魅力的な料理がズラリと並びます。ワインはソムリエールでもあるまゆみさんにおまかせで。

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 (左)付き出し3種盛りは奥からホウレン草と大豆のフリッタータ&イイダコのトマト煮&鶏肉のガランティーヌ。付き出しが3種盛りで出てくるお店なんて初めてだったのでメニューにある前菜10種盛りと内容が被らないのか聞いてみたら「付き出し用に3種類と前菜盛り合わせ用に10種類とで合計13種類仕込んでます」との驚きの回答が!
 (中央)徳島産カブラとトリッパの白い煮込み。トリッパは下処理を丁寧にしないと臭味が出るのでトマト煮込みではなく白い煮込みにするのは下処理に自信アリと見ました。そしてその見立て通りトリッパは臭味など皆無です。煮込みソースには隠し味に酒粕が入っていて添えられた削りペコリーノ・ロマーノを溶かしながら食べると旨味が溢れます。唐辛子のピューレも添えられていますがこちらは辛味が苦手な私にはちとから過ぎました。
 (右)スペインのペネデスのコヴィデス「カヴァ デュフィ・デル・マール・ブリュット・ナチューレNV」。

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 (左)愛知産銀杏と北海道産タラ白子のピッツァ。銀杏は嫌いだけどタラ白子が食べたくてオーダーしたこのピッツァ、もちろんタラ白子も美味しいのですが銀杏の美味しさにビックリ!新鮮な銀杏とはこんなに美味しいものだったのですね。これまで銀杏の真価を知らずにいた不明を恥じねばなりません。
 (中央)イタリアのピエモンテ州のロアーニャ「ランゲ・ビアンコ2013」。ロアーニャのランゲ・ビアンコの最大の特徴はシャルドネを主体にしてネッビオーロをブレンドしていること。まゆみさんがブルゴーニュグラスでサーヴしながら「これはさすがに他のグラスワインと同じ価格では出せません」と言うのでそりゃそうだろうと思ったのも束の間「1杯○○円です」と聞いて「それでも安過ぎ~!」と言うてしまいました。
 (右)イタリアのプーリア州のフェウディ・ディ・グアニャーノ「ロザーロ ネグロアマーロ」。

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 (左)青森産シャラン鴨のKAISUI蒸し焼きにマルサラソース。メニューを見て「シャランて鴨の産地で有名なフランスの地名でしょ?何故に青森県でシャラン鴨が??」と廣瀬店長に聞いたらシャラン鴨と同種の鴨を青森県で飼育している人がいるとのこと。その鴨肉を海水と同じ塩分濃度の塩水で蒸し焼きにすることで鴨肉をパサつかせずにしっとりと火入れすることができるそうです。確かにしっとりジューシーな焼き加減です。
 (中央)オーストリアのヴァイングート・アロイス・ヘレラー「ツヴァイゲルト2013」。個人的にツヴァイゲルトは好きな品種なのです。
 (右)イタリアのシチリア州のヴィニェーティ・ザブ「イル・パッソ・ヴェルデ」。カジュアル価格帯ですがビオロジック農法で遅摘みのネロ・ダーヴォラ100%ならではのパワフルな赤ワインです。

  まゆみさん、最終勤務日まで後10日もありますがひとまずお疲れ様でした。来年からの新展開を楽しみにしています。そして多くの飲食店がひしめく西天満にあってこのお店がしっかりと支持され続けている理由を雄弁に物語っている廣瀬店長の料理。今後も通うべきお店ですね。

中田シェフ×ドンナフガータの会@Wine Bar小塚

  六甲道「ABBRACCIO&BACIO(アッブラッチォ・エ・バッチォ)」中田オーナーシェフを招いてシチリア州の超有名生産者ドンナフガータのワインとそれに合わせた料理を楽しむ会に参加してきました。会場は西天満にて9/5に復活オープンした「Wine Bar小塚」です。

 ドンナフガータのワインについてはこのブログでもこれまでに「ヴィニャ・ディ・ガブリ」「ラ・フーガ」「タンクレディ」「アンゲリ」「ベン・リエ」等を紹介していますがここで改めてカンティーナの紹介を。
  マルサラの生産者の家に生まれたジャコモ・ラロ氏とガブリエラ夫人によってシチリア島コンテッサ・エンテリーナの地で1983年に創設されたカンティーナで、19世紀初頭にブルボン朝の王フェルナンデス4世の妃マリア・カロリーナ王妃がナポレオン軍の侵攻を恐れてナポリ宮廷からコンテッサ・エンテリーナへ逃げてきたという歴史に因んで「ドンナフガータ(逃げてきた女)」と名付けられました。
  ドンナフガータのワインは関西以外のエリアでは有限会社クリオ・インターナショナルが、関西エリアでは有限会社カリテ・エ・プリが輸入販売しています。そのような事情もあってカリテ・エ・プリは自社のネットショップでの販売と親会社である株式会社かめいあんじゅが運営する「Bistrot d'Anjou(ビストロ・ダ・アンジュ)」「SANT-ANGELO(サンタ・アンジェロ)」等での提供のみに販路を制限していたのですが数年前から他の飲食店にも卸すようになって現在では大阪市内の至るところで呑めるようになっています。
  ドンナフガータのワインの種類は年々増えていて、私が知る限りでも以下の20種類があります。同じワインでもヴィンテージによって使用するブドウ品種やブレンド比率が大きく変わるのも特徴的です。

【スプマンテ(泡)】
 ドンナフガータ・ブリュット
【ビアンコ(白ワイン)】
 アンシリア、リゲア、ダマリーノ、プリオ、ポレーナ、スルスル、ラ・フーガ、ヴィニャ・ディ・ガブリ、キアランダ
【ロザート(ロゼ)】
 ルメラ
【ロッソ(赤ワイン)】
 セダーラ、シェラザーデ、アンゲリ、タンクレディ、ミッレ・エ・ウナ・ノッテ
【ドルチェ(甘口)&グラッパ】
 カビール、ベン・リエ、ミッレ・エ・ウナ・ノッテ・グラッパ、ベン・リエ・グラッパ
 
  今回はWine Bar小塚のみかソムリエールが以下の5種類をセレクト。

<ワインリスト>
1.ドンナフガータ・ブリュットNV
2.プリオ2014
3.ルメラ2014
4.シェラザーデ2013
5.タンクレディ2008マグナムボトル

 ドンナフガータ・ブリュットはシャルドネとピノ・ノワールを使ってメトード・クラシコ(瓶内二次発酵方式)で醸造したスプマンテ。すっきりドライな仕上がりでクオリティーの高さは流石ドンナフガータといったところですが正直シチリアのスプマンテで5000円台という上代設定はかなり強気と言わざるを得ません。
  プリオはこの2014年ヴィンテージがファースト・ヴィンテージというドンナフガータの最新作。カタラット100%でステンレスタンクでの発酵&熟成。白い花のアロマティックな香りとレモン等の柑橘類のニュアンス。ドンナフガータお得意のキレイにまとまった白ワインですね。
  ルメラはシラーとネロ・ダーヴォラとピノ・ノワールとタナというかなり珍しい組み合わせで造ったロゼワインでピノ・ノワール以外の3品種がしっかりタイプのワインになる品種なのでロゼワインとしてはかなり重厚感あってジューシーです。
  シェラザーデはネロ・ダーヴォラ100%でステンレスタンク発酵とセメントタンク熟成。エチケッタに千一夜物語(アラビアンナイト)の主人公シェヘラザードをイメージした女性が描かれていて、ワイン自体もくぐもったスモーキーフレーヴァーがあってオリエンタルな印象を漂わせています。
  タンクレディはジュゼッペ・ランペドゥーサの長編小説「山猫」に登場する若者タンクレディの名前をワイン名に冠し、数々の賞を受賞してドンナフガータを世界的に有名にした看板ワイン。ヴィンテージごとに若干の違いはあるもののネロ・ダーヴォラとカベルネ・ソーヴィニヨンとタナが基本の3品種です。これこそドンナフガータの真骨頂と言うべき端正にまとまった造りで評論家が高得点付けるのも納得です。

  改めて感じたことは、ドンナフガータのワインはどれも綺麗かつ端正にまとまった造りで、決して外さない安定した造りです。これだけワインの種類が増えてもそのどれもが安定して美味しいというのはやっぱりスゴイなぁと。

  中田シェフとその盟友の門戸厄神「Aranjuez(アランフェス)」山崎オーナーシェフがヘルプとして加わってWine Bar小塚のコンパクトな厨房設備でコース料理を仕上げて行きます。

<コース料理>
1.テッリーナ・ディ“ブーダン・ノワール”
2.カキのオイル煮とカポナータ風インサラータ 自家製ブドウ酵母のパーネ・シチリアーノ添え
3.パスタ・コン・鮎
4.カヴァティエッリ・アル・ペスト・アッラ・トラパネーゼ
5.アイスランド産仔羊腿肉のマルサラ煮込みに焼きポレンタ添え
6.中田シェフからの締めの一皿
7.カンノーロ

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 (左)みかソムリエールのたっての希望でコースに入った中田シェフのスペシャリテ。中田シェフ曰く「サルシッチャ状にしてしまうと細長いのですぐに火が通り過ぎてしまい、テリーヌ状にして湯煎で火入れすることで火の入り方を調整しています」。確かにこの素晴らしく滑らかな食感はサルシッチャ状では出せないですよね。今回の参加者の大部分が初めて中田シェフの料理を食べるので最初の一皿目は特に重要であり、これを食べて全員がこの後の料理への期待感を高めたはず。
 (右)オリーヴのペーストを混ぜ込んだカポナータの上にオイル煮にして旨味を凝縮させたカキをのせ、ハードタイプのリコッタを削り掛けてドライケッパーを散りばめて。オリーヴのペーストが効いたカポナータは甘味が無くてまさにワインと一緒に食べるためのカポナータ。

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 (左)シチリアの名物パスタであるパスタ・コン・サルデ(イワシとウイキョウと松の実とレーズンのパスタ)をイワシの代わりに鮎で再現。鮎をエキストラヴァージンオリーヴオイルとひまわり油とのブレンド油に浸してじっくりコンフィ、そこにウイキョウと松の実と味付けした焼きパン粉を合わせてあります。レーズンは日本人には馴染みが薄いので入れてないとのこと。中田シェフは自分で作れるものは全て自家製するのをモットーにしているのでお店では乾麺パスタは一切使わずこのパスタ・コン・鮎にも自家製スパゲッティーニを使用しています。日本特有の素材である鮎を使っているのに完全にシチリア料理として成立しているのがmolt bene!
 (右)ペスト・アッラ・トラパネーゼもまたシチリアの名物料理。アーモンドとトマトとバジルで作ったペーストをパスタのサルサにしたり魚介と和えて前菜として食べたりします。中田シェフのペスト・アッラ・トラパネーゼはフレッシュトマトを使っていて、生のホタテ貝柱と国産カルドンチェッリとともに自家製カヴァティエッリに絡めてあります。

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 (左)中田シェフが世界最高の仔羊肉だと絶賛するのがアイスランド産の仔羊肉。お店では背肉をアッローストして提供しますがワインバーの厨房設備でアッローストをするのは困難であることと、上述の通りドンナフガータが元々はマルサラの生産者であることに因んで腿肉のマルサラ煮込みに決まりました。仔羊肉自体の質の高さもさることながらこれだけ仔羊肉の旨味を集約・凝縮させつつソースはモチャッとせず鋭敏にキレているところが中田シェフの力量なのですよね。
 (中央)中田シェフからの締めの一皿は・・・サバ寿司!?実はこれ、リゾット・ネロ(イカスミのリゾット)の上にサバのマリナータをのせてあるのです。見た目は完全にサバ寿司ですが食べてみてもやはりサバ寿司です、それもメチャクチャ美味しいサバ寿司。
 (右)中田シェフ的解釈のカンノーロ。シチリア名物ドルチェのカンノーロを知っている人が見たらビックリするスタイルです。

  マグナムボトル以外の各ワインを2本ずつで参加者14人でシェアというのは理想的な人数ですがイスを詰め詰めにしないといけないので身動きが取りにくく、やはり12人が限度かな~。カトラリーが足りなかったりと他にもお店のオペレーションに不満な点が多々あって、中田シェフの練りに練られたコース料理とドンナフガータのワインに助けられた部分が大きいワイン会だったというのが正直な感想。来年には第2回目として某フレンチシェフとのコラボワイン会も企画されているそうなので今回の反省点が第2回目にしっかり活かされていることを願います、と今後への期待を込めてやや厳しい目の結びとしておきます。